2012年12月8日土曜日

放射能 - 今こそ冷静な原発論議を

画像*産経新聞
北朝鮮のミサイル関連の発言に
ついて説明するため、
囲み取材の場所へ向かう
藤村修官房長官
=7日午後5時43分、
大阪府吹田市(沢野貴信撮影)
7日夕、久しぶりに震度5クラスの地震に
見舞われた日本列島。

NHKの「津波が来ます!早く逃げてください!命が大事です!」ーとの緊急地震速報に311の悪夢が甦り、思わず身震いした方も多かったのではないでしょうか?

後のTV解説を観ていますと、 M9であった311と今回のM7.3では、地震の規模としては200分の1だそうです。

311のずれたプレートの反作用である対としての地震としては小規模すぎて、今後、本当の対となるM8〜9クラスのが来るとのことでしたが、どうせ「羹に懲りてナマスをふく」- なら、もうひとつの差し迫った危機である北朝鮮のミサイルの脅威と、中国が日本に向けている核ミサイルとかもしっかり報道して、国民の危機意識を鼓舞していただきたいと思います。

だって、政府の官房長官からして、国家の安全より選挙優先の、この体たらくの発言ですからね。きっと世界中の笑い者でしょう。

「ミサイルさっさと上げて」 藤村官房長官 地元・大阪で致命的失言
2012.12.7 - 産経

ーで反原発派でなくてもちらっと頭がよぎるのが、原発は大丈夫なのかしらと。 地震や津波による被害より、そっち方面に即、関心が行ってしまうのはもう病気かもしれませんね。

一方、支持回復に苦戦を強いられている野田首相は、最近、自民の原発政策を「続・原発」などという造語をひねり出して自民党攻撃されています。

「卒・原発」の「未来」の 嘉田氏にいたっては、「日本は2発の原爆で軍国主義から抜け出せた」〜ならば、「福島原発事故で原発を卒業するチャンス」だという理屈。しかし、ちょっとコレ、元祖「反原発」の社民党党首・福島瑞穂氏や共産党だって使わない論理ではないかとビックリです。



いかがでしょ?
この真っ赤に染まった「日本原罪論」に背筋が寒くなるのは私だけでしょうか。ここから件の「自虐史観」が導き出されるのも自明の理であります。

このように肝心の代替エネルギーの確保やエネルギー政策の現実的な工程、経済的損失などお構いなしに「反」「脱」「卒」「続」の言葉だけが虚しく踊っておりますが、また新たな事実が出て来たようです。

放射能に対する無知な思い込みと長年に渡るメディアの擦り込みが、いかに我々の脳を汚染し続け、反戦や平和主義と同様、恐怖でもって支配されてきたかわかる記事です。

残留放射線は「誤差範囲」 放影研が見解
2012年12月8日 - 東京新聞

>> 被爆者の健康を日米共同で調査している放射線影響研究所(広島市、長崎市)は7日、原爆の核爆発から遅れて発生する「残留放射線」による被ばく線量は「誤差の範囲内」で、被爆によるリスク算出には影響しないとする見解を発表した。

放影研は被爆者のがん発症リスクなどの計算で、爆発時に放出される「初期放射線」による被ばく線量のみを用いており、残留放射線量は用いていない。東京電力福島第1原発の事故後、残留放射線や内部被ばくに対する関心が高まり、放影研の手法やデータを疑問視する報道なども相次いだことから「このままでは存在基盤を揺るがしかねない」として見解を出したとみられる。<<

黒い雨、がんリスク増えず 放影研、1万3千人
2012年12月8日 - 東京新聞

>> 被爆者の健康を日米共同で調査している放射線影響研究所(広島市、長崎市)は7日、原爆投下後に放射性降下物を含む「黒い雨」に遭ったとされる約1万3千人のデータを解析した結果、黒い雨に遭ったことでがんになるリスクの増加はみられなかったと発表した。

黒い雨の影響をめぐる住民の調査は、長崎・西山地区で50人を調べた以外ではほとんど例がなく、広島と長崎の両方を含む大規模データの解析は初めてとみられる。ただ、データの比較方法など、解析の手法に専門家から批判の声も出ている。<<


◇ ◇ ◇

そして恐怖心を取り去ったら、そろそろ理性的に議論してもいい頃です。
長文ですが12月7日付け産経新聞「正論」から全文、転載いたします。

京都大学 原子炉実験所教授 山名元 
「脱原発」言うなら現実的代案を

2012.12.7 03:15 - 産経新聞

脱原発を前面に立てて総選挙を戦おうとする政党が多い中で、政策的争点としての「脱原発」の意味合いが、改めて問われる。消費税増税や環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)などの主要政策課題が、複雑で争点になりにくいのに対し、「脱原発」は分かりやすいうえ、原子力を避けたい国民感情に良くマッチする。「脱原発」は、無党派層を強く意識して、否(いや)が応でもシンボリックな政策課題として使われることになる。

 ≪原発はエネルギー安保の根幹≫

しかし、今回の総選挙で「脱原発」が、政党選択の優先的な指標になることが本当に適切なことなのか疑問である。それ自体に具体性が欠け、願望的な目標設定にしかなっていないからである。

今回は、希望的政策を強調して政権を担いながら乏しい成果しか挙げず政治混乱を招いた現政権に終止符を打ち、より現実的で実効的な政権を選び直す選挙ではないか。問うべきは、各政党の「目標設定」とそれに向けた「現実性のある具体策」のペアである。

各政党が「脱原発」を主な争点とするなら、それに至るまでの具体策を、責任を持って提示できるかどうかが問われる。「脱原発」を看板にするのであれば、それを実現するための具体策を、政権公約として明確に表明することを求めたい。これは「あらゆる政策資源の投入(革新的エネルギー・環境戦略)」というような曖昧なものではなく、必要とされる国民負担やリスクについても明記した、現実性を持つ具体策である。

原子力問題は、他の重要政策から独立した「シングルイシュー」ではない。エネルギー源を海外に頼る我が国のエネルギー安全保障の根幹にかかわる課題であり、原子力の有無は、

(1)貿易や経済(2)地球温暖化問題(3)外交や国際政治(4)国家安全保障(5)社会福祉や生活

-のすべてに影響を与え得る。

例えば、短期間での脱原子力の強行は、火力発電割合の増大により膨大な燃料費の海外支払いを増やし、電力料金上昇による日本製品の国際競争力低下を招く。原子力を代替する液化天然ガスの増大は、中東やロシアへの依存を高める可能性があり、地政学的なリスクを背負いこむことになる。

 ≪トカゲの尻尾切りでは済まぬ≫

さらに、世界の温室効果ガス排出削減に逆行するばかりか、世界の化石燃料の価格上昇の誘因になる可能性すらある。これらの課題を如何(いか)に分析し如何なる戦略的方策を講じるかについて政権公約で明示しないまま、「脱原発」を宣伝することは、政党としてあまりに無責任ではないだろうか。
原子力行政の問題は、「エネルギーや廃棄物の戦略に向けた政府の統合的な取り組み機能の弱さ」と「ガバナンスの弱さ」に原因があったはずだ。エネルギー資源をほとんど持たない日本としては、化石燃料、再生可能エネルギー、原子力、省エネルギーなど限られた選択肢を、得意の技術力や外交力を生かしつつ総合的に組み合わせて、「リスクとコスト最小化」と「廃棄物合理化」を探求していくしかないのが現実である。

そのためには、エネルギーに関し

(1)供給事業(2)資源輸入(3)廃棄物管理(4)外交(5)科学技術開発

-など全てを包括的に司(つかさど)る行政組織があって然(しか)るべきで、そうした組織が機能していれば多くの無駄や問題の発生を避け得たのではないか。

 ≪エネ行政機構の改革こそ必要≫

我が国にも、米国のエネルギー省(DOE)のような政府機能が必要なのではないか。このような強力な政府機能なら、一定規模の慎重な原子力利用と、増強する再生可能エネルギーを組み合わせつつ、火力依存度増によるリスクを最小化する戦略を作ることは可能であろうし、それは、国民的議論と称する政策審議よりも、はるかに実効性を持つはずである。

現政権が国家戦略室で行ったような、特定方向に偏った曖昧なエネルギー政策の策定を卒業し、真の意味でのエネルギー戦略構築を目指す仕組み作りが、次の政権には求められる。トカゲの尻尾切りのような「脱原発」を表看板に掲げるだけでは、真のエネルギー戦略の再構築はできないということである。エネルギー戦略や放射性廃棄物戦略のような複雑な国家戦略を作り上げるには、官僚の力と政治家のリーダーシップの合体が不可欠であり、エネルギー行政機構の改革の具体案こそが、新政策として求められるのである。

このような「前向きのエネルギー統合戦略の再構築」を公約に掲げる政党がなく、「脱原発」のスローガンだけが飛び交い、他党批判に使われる現状はまさに、「大衆迎合の政治文化」(佐伯啓思氏=11月22日付本欄)に、警鐘を鳴らしているのかもしれない。(やまな はじむ)



また、リバティウェブでは各党の主張に基づく、 バーチャルな公開討論会の形で、各党のスタンスをわかりやすく説明しております。こちらもじっくり御覧になってください。

  脱原発政党だけなのか?出でよ、原発推進政党 バーチャル公開討論会を開催

2012年12月5日 - リバティウエブ

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