2012年3月4日日曜日

日銀の「インフレ目標政策」は本物か?

【ついき秀学のMirai Vision】
<フジサンケイビジネスアイ 寄稿コラム 2012.3.2> より転載 



幸福実現党党首 : ついき秀学 

日銀が先月14日の金融政策決定会合で決定した追加の金融緩和は、市場にとってポジティブ・サプライズでした。

主な決定内容は、

(1)日銀として「中長期的な物価安定の目途」を示すこととし、当面は消費者物価の前年比上昇率1%を目途とする
(2)同1%が見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等により強力に金融緩和を推進する
(3)資産買入基金(共通担保資金供給オペ枠を除く)を20兆円程度から10兆円増額して30兆円程度とする-というものです。  

これがデフレ脱却のためのインフレ目標政策の導入と見られたこと、及び市場が全く予期しないタイミングでの緩和措置となったことから、市場が好感して円安・株高が進行しています。外国為替市場では円相場がそれまでの1ドル77円台から大きく下落して、1ドル80円から81円台で推移するに至り、株式市場では日経平均株価が9000円近辺から9800円台(2月29日)にまで回復しました。  



◆金融緩和に向けた水面下の動き  

1990年代のバブル崩壊期には、株価が大きく下落しているにもかかわらず平然と利上げを行い、近年のサブプライム危機やリーマンショック時には、常にワンテンポ遅れて小出しの金融緩和に終始していた日銀が、今回のように市場にポジティブ・サプライズを与える決定を行ったのは画期的と言えますが、そのきっかけとなったのが米連邦準備制度理事会(FRB)の動きです。

1月25日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、FRBは長期的な物価目標を年率2%と設定すると共に、事実上のゼロ金利政策を2014年終盤まで維持すると決定しました。これを受けて国内でも与野党から、日銀の金融政策目標の分かりにくさや対応の不十分さに対する批判の声が強まり、今回の決定に至ったのです。 

さらには、手前味噌ながら、1月下旬に我が党から発刊された『日銀総裁とのスピリチュアル対話--「通貨の番人」の正体』(大川隆法著)の影響も指摘できるでしょう。

白川方明総裁の潜在意識にアプローチし、デフレに安住する、その本心をえぐり出した同書は、例えば2月初旬に開かれた国会議員の勉強会では某講師により推薦図書に挙げられるなど、水面下で政官界にも浸透しており、日銀の金融緩和への動きを促進したと見られます。  

◆監視と“圧力”が必要な日銀の政策  

今回の日銀の決定については、一層の金融緩和とインフレ目標の導入を強く訴えてきた我が党としては、その主張が一部取り入れられた面もあり、歓迎したいところですが、引き続き日銀がデフレ退治に本腰を入れるかどうかはいまだ不透明です。  

FRBと日銀で、物価目標(目途)の設定という一見似た形の金融政策の枠組みを取るようになったとは言え、FRBは「長期的な物価上昇率は主に金融政策によって決定される」(1月25日付プレスリリース)と、物価上昇率への金融政策の効果を明言しているのに対し、日銀は「物価を適度に上げるためには、日本経済の成長力、成長期待を強化することが不可欠であり、それなしにデフレ問題の解決はできない」(1月17日の白川総裁講演)と、相変わらず金融政策では物価を上げることはできないとする立場にあります。

結局、日銀は物価のコントロールに責任を取る意志を持たないため、デフレ退治に必要十分な緩和策は行わない可能性が高いと言えるでしょう。  

それをほのめかしているのが、先月23日の衆院予算委員会における質疑です。白川総裁は日銀出身の民主党議員の質問に答える形で、長期金利が1%上昇した場合、金融機関の保有する国債価格の下落により、大手銀行で3.5兆円、地域の銀行で2.8兆円の損失が生じるとの試算を示しました。

確かに景気拡大やインフレに伴って金利が上昇すれば国債は値下がりしますが、同時に銀行は貸出金利を引き上げて収益拡大を図ることができるので銀行保有国債の評価損を大きく心配する必要はありません。

国会でこうした質疑がわざわざ行われる背景には、金利が上がれば銀行に損失が出ると脅すことで、低金利のデフレに安住したいという日銀とその関係者の下心が窺えます。このような日銀に対しては、引き続き十分な監視と“圧力”が必要です。

0 件のコメント:

コメントを投稿