2012年2月19日日曜日

政府を頼るのは“超”重税国家への道

【ついき秀学のMirai Vision】 
<フジサンケイビジネスアイ 寄稿コラム 2012.2.17> より転載


幸福実現党党首 ついき秀学






民主党は今月10日、2009年の総選挙でマニフェストに明記した新年金制度導入で必要となる財源試算を公表しました。

会社員や公務員、自営業者といった職業によって分かれている現行の年金制度を一元化し、納付した保険料に応じて受給額が定まる「所得比例年金」と、低所得者などに対して税金を原資とする満額で月額7万円の「最低保障年金」とに置き換える構想です。

今回の試算では、2015年度に消費税率を10%に引き上げても、翌年度から新制度を導入すれば、高齢化がピークとなる75年度には、さらに最大7.1%もの税率引き上げが必要となります。


実はこの試算は昨年3月、菅政権時代に民主党幹部の指示で厚生労働省により算出されていたものの「増税幅が大きくなる」との政治的理由から“隠蔽(いんぺい)”されていました。
ところが今年に入って、公明や自民が消費増税の議論に応じる前提として、政府・民主党に対し社会保障制度改革の全体像を示すよう求めたことから、与党側は二転三転した挙句、試算を「参考資料」と位置付けた上で公表に踏み切りました。

しかし、野党側は、試算公表で追加増税幅が明らかとなって世論の反発が強まるとの思惑からこれを要求したにすぎないため、はなから消費増税協議に入るつもりはないと見られます。
このままでは野田政権は単独で消費増税法案を提出せざるを得ず、国会運営は野党のペースで進んでいます。  

◆ 破綻必至の年金制度  

折しも、先月30日には国立社会保障・人口問題研究所が将来推計人口をとりまとめ、その中位推計によれば、2010年に1億2806万人の総人口は、50年後の60年には8674万人にまで減少し、年齢別では、14歳以下が全体の9.1%、15~64歳の生産年齢人口が50.9%にそれぞれ減少する一方、65歳以上の高齢者の割合は39.9%にも達すると見込まれています。

これは、高齢者1人を生産年齢人口2.8人で支える現在の「騎馬戦型」から、60年には1.3人で高齢者1人を支える「肩車型」の人口構造となることを意味しており、現状の社会保障制度の維持はもはや不可能と見なくてはなりません。  

例えば、高齢者一人あたりの社会保障給付費を現状の水準で一定とし、名目GDPが生産年齢人口に連動して減少していくと仮定すれば、社会保障給付費の名目GDPに対する比率は2010年の24.6%から2055年には54.0%に達し、この29.4%ポイントの上昇分を全て消費税で賄うなら、実に58.8%もの税率アップが必要と予測されています
(東京財団上席研究員の原田泰氏の試算)。

60%超の消費税率は誰がどう見ても非現実的と言わざるを得ないでしょう。  
加えて、厚生年金と国民年金の積立金も2006年度には149.1兆円あったものが、2011年度末には111.7兆円まで減少しており、今後もこの減少ペースが続くなら、積立金は早くも25年度には枯渇しかねないと言われています(鈴木亘学習院大教授の説)。  

◆「自助努力」中軸の社会保障制度を  

このように、現行の年金制度は場当たり的な弥縫策では立ち行かない状況に追い込まれています。放っておけばその財源確保を名目に時の政権によって大増税が幾度となく繰り返され、そのたびに日本経済がダメージを受け、人口減少と相まって没落していく未来が待ち構えているのです。  

そこで、我が党は「自助努力の精神」を中軸に据えた社会保障制度への移行を提言しています。そもそも社会の高齢化は平均寿命が伸びた結果なのですから、これに応じて働ける期間を伸ばす努力をすべきで、そのためのハードやツールの開発・整備も含めて、少なくとも75歳程度までは働ける社会を構築すべきです。

引退後に関しては、最低限のセーフティネットは維持しつつも、家族の助け合いを基本とする制度に改めなくてはなりません(この方が、子ども手当をばらまくよりも、よほど少子化対策として効果があるでしょう)。

若い世代向けには積み立て方式による新たな年金制度を導入することもできますが、現役世代が高齢者を支える仕組みの現行の年金制度は持続不能で、その整理・縮小は不可避です。

それでも政府に頼ろうとすれば、最後は経済的な不自由と窮乏化を伴って、消費税率60%といった“超”重税国家を招き寄せることになるのを知らなくてはなりません。 2012.2.17

0 件のコメント:

コメントを投稿